※写真をクリックすると大きく表示されます。
文字サイズ
※写真をクリックすると大きく表示されます。
施設名称 | 広島合同庁舎2号館 |
発注 | 国土交通省中国地方整備局営繕部 |
設計・工事監理 | 設計(基本・実施):(株)あい設計 工事監理:(株)内藤建築事務所 |
施工 | 大成建設(株) |
概要 | 所在地:広島県広島市中区上八丁堀6-30 延べ面積:19,843㎡ 構造・規模:鉄骨鉄筋コンクリート造・地上11/地下1/塔屋2階 |
工期 | 2018(平成30)年1月~2021(令和3)年7月 |
●設計コンセプト
防災拠点としての耐震性能の確保
本庁舎は、中国地方整備局などの機関が入居しており、大地震などの災害発生時には、災害応急対策活動の拠点として重要な機能を担います。
官庁基準(※1)に基づく構造体の耐震診断を実施した結果、「地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性は低いが、要求される機能が確保できないおそれがある。(耐震安全性の評価:c)」との評価が出たことを受け、地震時の来庁者や職員の安全を確保し、災害後も庁舎としての機能を維持するため、防災拠点として必要な耐震性能を確保する改修工事を行いました。また、本庁舎は、広島城の東側に位置しており、「一団地の官公庁施設(基町団地)」区域内の建物として景観づくりにも配慮された外観であるため、そのデザインを残す必要があり、また、施設利用者が多く、工事期間中も入居官署が本庁舎において業務を継続して行う必要があったため、建物の地下1階より上部を地盤から切り離して、建物下に免震装置を組み込んで補強を行う「免震レトロフィット(※2)」を採用しました。
施設の特徴
本庁舎は、昭和46年度に建てられた事務庁舎で、現在では広島労働局、中国経済産業局、中国地方整備局をはじめとした10官署が入居しており、来庁者を含め多くの施設利用者がいます。
周辺環境との調和
江戸時代の広島城内大手郭(うちおおてくるわ)にあたる敷地に立地しており、歴史ある景観に隣接して置かれた立方体の建物ボリューム(四方の外壁面と平面が同寸法)として計画されています。外観も縦横のフレーム状の構造体とガラス面だけが見えるよう圧迫感を抑えたシンプルなデザインとなっており、緑豊かな周辺環境に映える白い外観が特徴です。
機能的な平面と構造計画
広島市の中心市街地に立地することから、四方からのアクセスを考慮して南北に玄関を設けた平面形状としています。また、執務室エリアをすべて外壁に面する無柱空間に配置する構造形式を採用して、執務室の採光・通風に最大限配慮した機能的な庁舎として計画されています。
●施工手順
①外周基礎の構築
庁舎の外周に、建物の重さや地震の力を受け持つ杭を設け、杭の周りの地面を掘削して、庁舎の外側に設けた新設の杭に荷重を伝達するために鉄筋コンクリート基礎を構築します。また、外周基礎は建物と地盤とのクリアランスを確保する役割も担います。(写真1、図1)
②免震層を支える骨組みの構築
アイソレータ(天然ゴム系積層ゴム支承(NRB)(※3)、鉛プラグ挿入型積層ゴム支承(LRB)(※4))を設ける部分の上下を補強し、免震層を支える骨組みを構築します。(写真2、図2[アイソレータ上部(庁舎側)を支える骨組み])
③柱の切断
ジャッキにより建物上部を支えた状態で、アイソレータを設ける部分の柱を切断します。(写真3)
④免震装置の設置
免震装置は、アイソレータ(写真4-1)とオイルダンパー(写真4-2)から構成されます。本工事では、必要な耐震性能を確保するよう、減衰特性や鉛直支持能力の性能を考慮し、それぞれの選定を行い、NRB46台、LRB14台、オイルダンパー12台を採用しました。アイソレータは建物を支え、地震時には建物をゆっくり移動させる働きをします。一方でオイルダンパーは、建物の揺れのエネルギーを減衰させる働きをしており、この2つの装置によって、地震による揺れが建物に伝わりにくくなり、大地震時にも建物の被害を抑えることができます。
(注)
※1官庁施設の総合耐震診断・改修基準(平成8年制定)
※2既存の建物の基礎などに免震装置を新たに設け、建築のデザインや機能を損なうことなく耐震性能を確保する方法。
※3天然ゴムを使用した積層ゴムで、安定した復元力特性を示す。
※4天然ゴム系積層ゴムの中心部に鉛プラグを挿入した積層ゴムで、天然ゴム系積層ゴム支承(NRB)に比べ、減衰機能を有しているため、別途オイルダンパーが不要になったり、数を減らすことができる。