「公共建築」 第137号、第139号に触れて

2018/01/23

 第137号、数字上の区切りではないですが、1993年に「営繕協会」が「公共建築協会」へと協会名が変更となっての最初の号です。そして、年が明けて、第139号、表紙もカラー※1になって「顔」も大きく変わりました。

 

 「公共建築」という先見的な名での創刊から35年、第137号は「公共建築再考」、第139号は「公共建築-21世紀への指標」という、改めてこの時期に、公共建築とは何かを問う特集となっています。

 

 

 第137号では、松葉一清氏はアメリカの「パブリック・アーキテクチャ」との言葉を引用しています。直訳すれば、まさしく公共建築ですが、パブリックセクタ―が建設する建築という意味ではなく、都市においてパブリックな性格を担うものとされています。巽和夫氏は公共建築を所有面(体制面)と利用面(機能面)の二つの面で規定されると論じています。日本の公共建築の概念が、所有面(体制面)から利用面(機能面)にウェイトをより置くものに変遷してきたことを踏まえれば、今の日本での「公共建築」の語感というかニュアンスは、まさしく、「パブリック・アーキテクチャ」に近いものとなっているのではないでしょうか。

 

 また、巽和夫氏が総合設計制度を引き合いに出し、「民間建築」を「公共化建築」に誘導する手段として制度を解説しているのも興味深いです。営繕行政では、つい、どうつくるかに傾倒しがちですが、公共性の発現には、建築指導行政、まちづくり行政の視点が大切と気づかせられます。

 

 第139号では、1993年5月の建築審議会(当時)「二十一世紀を展望した官公庁施設の整備水準のあり方に関する答申」を受けた特集です。これを読むと、答申における基本的考え方をもとに、位置・規模及び構造の基準※2が定められ、官庁施設の整備手法を整理、体系化するプラットフォームが出来たことの価値に改めて気づかせられます。

 

 

※1:この表紙デザインは、今に続くものです。そして、皆さまお気づきではないかもしれませんが、「公共建築」は第209号(最新号)オールカラー化。今後、カラー化のメリットを活用した紙面づくりを目指します。

 

※2:国家機関の建築物及びその附帯施設の位置、規模及び構造に関する基準(平成6年12月15日 建設省告示第2379号)が制定・告示、即日施行された(最終改正平成25年3月29日 国土交通省告示第309号)。